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2008-09-11

無限の境界(BORDERS OF INFINITY)

無限の境界-創元SF文庫-ロイス・マクマスター-ビジョルド

親愛なるクローン』が入手できない問題が解決したので、一気呵成に次へ。

 

今作は、中編三編を含むオムニバス。

マイルズが過去に経験した事柄が、一つは(麻酔による睡眠中の)夢の中で、二つ目と三つ目は、上司に報告という形で語られる。

 

一つ目は、自領の山村で起きた事件を、まさに大岡裁きといった感じで解決する……という(『戦士志願』の時も感じた)、時代劇の匂いがするお話。

なんで、今までクローンだの宇宙船だのといった、SF的な話を続けてきたのに、何故、山村での大岡裁きなのかというと、それはこのシリーズの世界観に深く関わってくる。

今より未来に人類が、太陽系外に植民惑星を持つようになった後、なんらかの原因で、ある惑星が、地球、もしくはその他の人類と隔絶してしまい(孤立時代)、技術的にも社会的にも退行してしまう。

そして、それが惑星バラヤーであり、マイルズの生まれ故郷である。

進んだ未来に、貴族階級なんてものが存在しているのも、社会的に退行してしまった為。

その孤立時代を終え、再び宇宙に飛び出すようになると、そこは植民惑星同士で喧嘩するような、正に江戸末期から明治初期のような状況になってました、と。

脱線したけど、全体的な状況としてはそんな感じで、中世ヨーロッパ及び日本の田舎の村みたいなイメージで、古くからの迷信だとかが信じられているような(このご時世に!)山間の村で起きた、嬰児殺し事件をマイルズが解決する。

 

二つ目はまた、傭兵艦隊の提督として、ミッションをこなすお話。

自由軌道』を読んで思った、

とすると……、続けて読んでいけば、クァディー達のその後が見られるかもしれないのだな(´ω`)


が現実に。

 

三つ目は、『親愛なるクローン』の冒頭で触れられ、かつマイルズがセタガンダ軍から追われる理由にもなっていた、捕虜一万人大脱走のお話。

このお話は、ビジョルドにしては珍しく(なのか?)、大局的には“脱走できて良かったね!”なんだけど、一部、全体の為に見捨てなければいけない犠牲が存在したり、マイルズがそれについて苦悩する姿が描かれたりと、ちょっぴり苦い終わり方になってる。

 

三編とも、いつもの長編よりも短めだけど、読み応えは十分。

今作で登場した新キャラや、伏線なんかもあるので、ますます次の本以降が楽しみになる。

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